Greenery Park

〜教会〜

ソフィアの事件簿 外伝

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教会

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 エイミー・ダグラスは待っていた。純白のウエディングドレスに身を包み、淡い金色の髪を霞のようなベールで覆い、綺麗に形作られた美しい花束を手にして。
 教会の扉の中からはざわめきが聞こえてくる。もう三十分も開始時間を過ぎているのだ。誰かが様子を確かめに来たが、それが誰だったのか、エイミーの目には入らなかった。隣では、エイミーの父親が腕時計をちらちらと見ながら、熊のように歩き回っている。

 ――ジョンったら、一体どうしたのかしら。家は教会までは車で15分のところだし、彼の両親もジョンはとっくに家を出たって言っているのに。ひょっとして、私と結婚するのが嫌になって逃げ出してしまったのでは? ……いいえ! 彼とは幼馴染で子供の頃からずっと付き合ってきたのよ。今更逃げ出すなんてこと……。それにプロポーズして結婚をせかしたのは彼の方だし……。ま、まさか事故!?

 ただでさえ透き通るように白いエイミーの顔を、不安が蒼白にしていった。

 その時、タクシーが急ブレーキをかけて教会の前に停まった。中からはジョン・レノックスが転がるように出てきた。
「ごめん、エイミー! 遅れてしまって!」
「ジョン! 無事だったのね! ……どうしたの、その格好は!?」
白いタキシードは薄汚れ、ネクタイはひん曲がり、麦わら色の髪はぼさぼさに乱れ、ハンサムな顔には引っかき傷が出来ている。
「え? ああ、これ。朝早く目が覚めてしまって、どうにも落ち着かなないもんだから、散歩しながら教会に行こうと思って家を出たんだ。林の途中で木から降りられなくなっている仔猫がいてね、助けようと思って木に登ったら……」
「木から落ちたのね!」
「仔猫はちゃんと助けたんだよ! ただ、こいつに起こされるまでしばらく気絶していて……。えーと、飼ってもいいかい?」
タキシードの胸から、みすぼらしく痩せこけたオレンジ色の仔猫が顔を覗かせた。
「もう、ジョンったら! そんなあなたが大好きよ!」
エイミーはジョンの首にしがみついてキスをした。



◆◆◆  Fin  
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byおとなし おっと,Greenery Park 2003/09/17初発表 2006/04/20加筆修正

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