Greenery Park

1月.雪の中の待ち合わせ

HOMETOP

ブレイズ

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 カメラのファインダーを覗き込むと、そこには天使がいた。

 天使は雪が次々と降り続ける中、公園の時計台を背に立っていた。白い衣に頭から足先まですっぽりと覆われている。

 ブレイズ・ダンカンは慌ててシャッターを切った。

 否、天使ではない。人間の女性だった。女性は肩を少し動かすとコートに降り積もる雪を落とした。一体、いつからそこに立っていたのだろうか。フードの下の小さな顔は整っていて、薔薇色に染まった頬の他は雪のように白い。カメラをズームしてみたが、濃い茶色の長い睫毛に覆われて目の色はよくわからない。

 ふいにブレイズの視界から女性の姿が消えた。ブレイズは驚いてカメラから顔を離した。女性は時計台に寄りかかり膝を抱えて座り込んでいる。

 ブレイズは慌てて駆け寄ると、女性に声を掛けた。
「大丈夫か?」

 女性が顔を上げると大きな瞳の中にブレイズの姿が映る。瞳の色はブレイズの翡翠色の瞳よりも更に濃い緑だ。白いフードが頭から滑り落ち、くるくるとカールしたベリーショートの明るい茶色の髪が現れた。

「ブレイズったら、やっと来たのね!」
 女性は威勢良く噛み付いてきた。
「あ、ニコラ! 君だったのか!」
「『君だったのか』じゃないわよ! いつまで待たせる気!? 三十分の遅刻よ!!」
「ごめん、ついつい夢中になっちゃってさ。池の白鳥が実に素敵な動きをしていたんだ。」
「もう! そんなことじゃないかと思ったわ! お昼を食べに行こうって電話してきたのはあなたでしょ!? 雪はどんどん降ってくるし、お腹は空くし、あなたが事故にでも遭ったんじゃないかって心配になってくるし……。」
 ニコラは一瞬泣きそうな顔になった。
「一旦、写真を撮り出したら、時間のことなんて忘れてしまうんだから!」
ブレイズは頭をうなだれた。
「……面目ない。俺が悪かった。」

 ニコラ・ブラウンは本来穏やかな性格で滅多に怒ることはないのだが、怒るとかなり迫力がある。しかも、怒るのはこちらを心配してのこととわかるだけに、全く反論ができない。

 怒りを発散させたニコラは、ブレイズの燃えるような赤い髪やカーキ色のオーバーに降り積もった雪を手で払いのけながら聞いた。

「それで、良い写真は撮れたの?」
「それは現像してみないとわからないな。良い感じだと思いたいけど。……特に天使は上手く撮れているといいな。」
 ブレイズは、大事なカメラをそっとケースにしまいこむ。
「天使? ああ、白鳥のことね。大丈夫よ、きっと。あなたなら!」

 ブレイズとニコラは手をつなぎ、半時間遅れの温かい昼食を取りに歩いて行った。

☆。.:*: Fin ☆。.:*:

by おとなし おっと,Greenery Park 2005/02/14発表,2006/05/15加筆修正

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